FIMの基礎と評価方法について解説します
- 回復期病棟に配属された方
- FIMをわかりやすく学びたい方
現在、回復期病棟で勤務する現役看護師です
回復期リハビリテーション看護を専門にお伝えしています
回復期リハにおいてADLの評価は大切です
リハビリが効果的か判断し、今後の方針を決める材料になるからです
回復期病棟で最も多く使用されているADLの評価法はFIMです
今回は新人看護師の方向けにFIMの基礎と評価方法について解説していきます
本日のテーマ
FIMの基礎と実際の評価方法がわかる
記事の内容
1.FIMの基礎知識
2.FIMの評価方法
3.評価時に悩みやすいポイント
4.FIMの学習におすすめの本
記事の信頼性
20年目の現役看護師で回復期・急性期・慢性期での勤務経験があります
以下の経験を踏まえてお伝えします
回復期、脳外科、循環器内科、心臓血管外科、消化器内科・外科、内分泌代謝内科、救命救急センター、心療内科、血液内科
読者の方へのメッセージ
FIMの採点評価は一見複雑に見え、最初はとっつきにくいと思います
しかし基本的な考え方は理解できると、わかりやすくて一目でわかる便利な評価法です
今回はボリュームが多くなりますが、回復期リハ看護に役立つ内容ですので是非見てみてください
それでは詳しく見ていきましょう
FIMの基礎知識
FIMはFunctional Independence Measureの頭文字をとったもので「機能的自立度評価法」と訳されています
- 1983年に米国で開発された日常生活動作(ADL)評価法です
- 日本からは慶應義塾大学リハビリ科も調査研究に参加しています
- 日本だけでなく世界の医療現場でADL評価法として最も多く利用されています
FIMの特徴
- 介護度を測定(自立度ではない)
- しているADLを評価(日常生活動作)
- 18項目を評価(運動項目13・認知項目5)
- 項目ごとに1点~7点の間で評価
- 最低点18点~満点126点
他のADLの評価法にバーセルインデックス(Barthel Index)もあります
- 「できるADL」つまり訓練場面での最大能力を図る指標になります
- 評価が3段階とおおまかであり、認知項目もありません
次にFIMの評価方法についてみていきましょう
FIMの評価方法
FIMは運動項目8項目と認知項目5項目からできています
具体的な内容を見ていきましょう
運動項目
運動項目は13項目です
セルフケア6項目(食事、整容、清拭、更衣上、更衣下、トイレ動作)
移乗3項目(ベッド・椅子・車椅子、トイレ、浴槽)
排泄コントロール2項目(排尿、排便)
移動2項目(歩行・車椅子、階段)
認知項目
認知項目は5項目です
コミュニケーション2項目(理解、表出)
社会的認知3項目(社会的交流、問題解決、記憶)
採点のポイント
各項目を1点~7点で評価します
1-4点は要介助です
介助の割合によって点数が変わります
- 全介助(75%以上の介助)は1点
- 3/4(50-75%)介助は2点
- 2/4(25-50%)介助は3点
- 1/4(25%以下)介助は4点
例)トイレ動作について評価する場合
トイレ動作を3つの動作に分けます「ズボンを下げる」「紙で拭く」「ズボンを上げる」
「ズボンを下げる」のみは2/3(66%)介助を要するので2点となります
「ズボンを下げる」「紙で拭く」の2つでは1/3(33%)の介助を要するので3点となります
5点は準備・監視・声掛けです
6-7点は自立(介助不要)です
- 7点は自立で介助不要です
- 6点は修正自立といいます
- 介助は不要だが時間がかる(目安は3倍)場合は6点
- 手すり・装具・補助具などを道具を使用する場合は6点
評価時に悩みやすいポイント
【評価の前提】
- 「できる動作」でなく「している動作」を評価する
- 差がある時は低い方につける
食事は蓋や封を開ける、エプロンをつける場合は5点
整容は口腔ケア、整髪、手洗い、洗顔、髭剃りまたは化粧を評価する
- 口腔ケアは歯磨きをつけてもらうのは5点
更衣で着るものによって差がある時は、主に着ている服で評価する
- 装具の装着は更衣動作に含む
移乗は軽く引き上げ3点、しっかり持ち上げて腰を回すと2点、2人介助は1点
浴槽は浴槽に入る、湯につかる、湯から上がる、浴槽から出るの4つで評価する
- 浴槽をまたぐ時に片足をまたがせる場合は4点、両足を浴槽に入れると3点
- シャワー浴だけの場合はシャワーチェアへの移乗を評価する
排尿管理は失禁しても処理できれば失敗とはならない
- 失敗は月1回未満は5点、週1回未満4点、毎日2点
- 尿器で自分でとれるが、破棄してもらっている場合は5点
- 介助者が完全に排尿誘導している場合は1点
- 自己導尿の自立は6点
排便管理は緩下剤の内服は6点
- 座薬の使用は週1回程度6点、月2回以下7点
- 座薬を挿入してもらう週2回以下5点、隔日は4点
移動は15mを自立できれば5点、50mを自立できれば7点
- 見守りが必要な時は5点、杖や装具を使用して自立の場合は6点
階段は4-6段が自立できれば5点、12-14段自立できれば7点
- できるADLで評価しても良い
- 高さはそれほど気にしなくてよい
- 上がりと下りの差がある場合は低い方をつける
- エレベータは補助具とは考えない
理解は患者に話しかける際にどのくらい配慮・介助が必要かで評価する
- 繰り返した頻度、理解できた割合で評価する
- 言っていることを正しく理解できればその先の判断力は問わない
- 基本的欲求程度の内容の理解であれば5点、複雑な内容が可能6点以上
- 単語レベルは2点、イエスノー・ジェスチャーも2点
表出は患者の言葉を聞き取る際にどのくらい努力・介助が必要かで評価する
- 聞き直した割合で評価する
- 言いたいことが伝えられていれば、内容や意味は問わない
- 基本的欲求程度の内容が伝われば5点、複雑な内容が可能6点以上
- 単語レベルは2点、イエスノー・ジェスチャーも2点
社会的交流は周囲と適切にかかわる、不快感を与える、迷惑をかける頻度程度で評価する
- 内気な性格で他者との交流はないが、適切な行動をとれる場合は7点
- 抗うつ剤の使用は6点
- 訓練に非協力的・拒む頻度で評価する
問題解決は日常生活に即した問題への対応について評価する
- ナースコールで必要なことを依頼できる頻度で評価する
- 内服を自己管理できていなければ5点
記憶は日常生活で必要な範囲での記憶について評価する
- 医師・看護師・訓練士の顔を覚えていられない割合で評価する
- 訓練のスケジュールや検査の時間などを覚えていられない割合で評価する
最後にFIMの学習におすすめの本を紹介します
項目ごとの具体例がのっているので実際に評価する際に役立ちます
FIMの学習におすすめの本
脳卒中の機能評価-SIASとFIM[基礎編] 千野直一(著・編)、椿原彰夫(著・編)、園田茂(著・編)、道免和久 (著・ 編集)、高橋秀寿 (著・ 編集)
FIMを初めて学ぶ方向けの本です
項目ごとの説明・採点方法など基礎からわかり易く解説しています
著者の千野直一先生は看護師・コメディカル向けのFIM講習会を主宰している代表でもあり、第一人者でもあります
今回紹介する本はFIMを初めて学ぶ方にとてもおすすめです
講習会にも参加しましたが、とてもわかりやすく学ぶことができました
まとめ
今回は新人看護師の方が悩みやすい「FIMの基礎」についてお伝えしました
他にも「回復期病棟の新人看護師の皆さんの役に立つ」記事を紹介しているので興味のある方は見てみてください
疾患別の看護に関する記事
①脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血
急変時の対応に関する記事
①けいれん時の対応
【回復期リハ看護 急変対応】けいれん時の対応について現役看護師が解説
②脳梗塞・脳出血の再発時の対応
【回復期リハ看護 急変対応】脳梗塞・脳出血の再発について現役看護師が解説
③転倒転落時の対処方法
【回復期リハビリテーション看護】転倒転落時の対応について現役看護師が解説
④心停止の学習方法(BLS/ACLS/ICLS)の紹介
看護業務に関する記事
①メンバー業務
【回復期リハ看護】メンバー業務(情報収集・アセスメント・報告)のコツを解説
②リーダー業務
【回復期リハ看護 新人から3年目看護師必見!】リーダー業務を現役看護師が解説
③安全にADLを拡大する方法
【回復期リハ看護 新人看護師必見!】安全にADLを拡大する方法を現役看護師が解説
④看護計画立案
【回復期リハ看護 新人看護師必見!】看護計画を現役看護師がアドバイス
⑤排便コントロール
【回復期リハ 新人看護師必見】排便コントロールと便秘薬を現役看護師が解説
⑥冷湿布・温湿布・テープ式の使い方
⑦カロナールとロキソニンの使用方法
⑧夜勤の睡眠対策
参考書・看護グッズに関する記事
看護師の方に向けて誠意を持って書いていますが、個人的な体験と意見が含まれていることをご承知ください
最後まで読んで頂きありがとうございました
おとうさんナース
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